A.2段増幅にすることで入出力間を同相(非反転)アンプにしました。
B.各増幅段はエミッターまたはソースに抵抗を入れて、この抵抗とドレインまたはコレクターにつける抵抗の比率で利得が決まりやすくしました。
C.初段はDC入力が可能なようにローノイズのJ−FETを使いました。
D.MM−EQは仕上り利得が過剰になりやすいので初段の次にATTを入れて減衰させ、利得を調整しながら後段へ向けて電圧のシフトが出来るようにしました。
E.ATTを高インピーダンスで受けながら後段へつなぐためにエミッタ―フォロアー(以下、エミホロ)を入れました。
F.後段は高hfeでローノイズのTRを使い、同時にDレンジを確保するために電流は多めにしました。
G.当然のことですが、RIAA曲線を得る為のイコライザーはNFBではなく負荷です。
H.出力はコンプリメンタリーTRのエミホロにして低インピーダンスで出力しました。
I.ブロックダイヤには書きませんでしたが、直流域が高利得なのでDCサーボをかけました。
☆.増幅部回路図
次にL−CHの回路図を掲載します。

上図でTR01、03が初段で電流は約0.5mAです。部品番号は奇数がL−CH、偶数がR−CHです。R−CHは省略。
@.使用FET、2SK170、2SJ74は超低雑音ですが、Vランクが必要です。
理由は20kHzのDレンジが初段で決まってしまうため、次善の策として電流値の大きいVランクを使って少しでも大きくしました。
Vランクの入手は困難ですが、必要です。
A.R13〜27がATTプラス電圧シフトです。
B.TR05、07がエミホロで、電流は約2.3mAです。
C.TR09、11が後段で電流は約12.5mAです。
D.D01、03は次のコンプリメンタリーエミホロのバイアス用です。
E.R37〜41、C11〜21はRIAA負荷です。低域で無負荷利得と負荷利得の差が少ないので素子数が多くなりました。(データ後出)
F.TR13、15はコンプリメンタリーのエミホロで、R43、45で電流を約2.5mAに設定しました。
G.当回路ではプラスとマイナスの電源ラインの途中には、例えば初段だけさらなるリップル改善用のRCフィルターを入れると言うことが出来ません。
H.IC01はDCサーボです。この回路はオペアンプ1回路で同相のNFBがかけられるもので、筆者の常用です。
※.この回路は筆者の発明ではないので、事業化する場合は知的財産所有権に注意する必要があります。
☆.増幅部のプリント基板
実験用のユニバーサル基板(AT−1S)を用いましたが、検討を重ねるうちに回路がふくらみ、部品を斜めに置いたり、抵抗を折り曲げて昔のELR型のようにしたり、最後は基板を継ぎ足したりしました。
決して推奨出来るものではありませんが、参考のため部品面から見た設計用の図面(透視図)を掲載します。

次に増幅基板の部品面の写真を掲載します。

次に同基板の銅箔面を掲載します。

☆.電源部回路図
次に電源部の回路図を掲載します。

今のところ手持ちの小さなトランスを使った為、上図に示すように±12Vしか出せません。
前記増幅部回路図のところで述べたように初段専用の追加のリップルフィルターを置くことが出来ない為、上図の範囲で厳重にリップルを取らなければなりません。
この為、整流直後の電解コンがことさらに大容量です。また、TRをダーリントン接続にしてツェナーによるフィルターとRCによるフィルターでリップルを十分に落としました。
MOSFETを使う方法もあろうかと思いますが、トランスの電圧が低いので使えませんでした。
☆.電源部のプリント基板
次に電源部のプリント基板設計用の部品面図(透視図)を掲載します。

C01、C02は2200μFと4700μFのどちらでも入る設計をしました。
次に電源基板の部品面の写真を掲載します。

次に電源基板の銅箔面の写真を掲載します。

☆.測定データ
次に利得F特の特性を掲載します。

次にRIAA偏差の特性掲載します。

上図で150Hz付近が0.2dBほど上がっているのは筆者の好みの音質にする為のものです。
10〜20Hz付近のうねりは低域で無負荷と負荷の利得差が少な過ぎるために追加したR41、C19、C21によるものです。
次に20Hzの歪率特性を掲載します。

次に1kHzの歪率特性を掲載します。

次に20kHzの歪率特性を掲載します。

NFBをかけていないので、どの周波数もNFB型に比べれば見劣りすると思います。
また、NFB型の回路では後段で飽和に達するのですが、20kHzは後段の利得が低くなるので後段より先に初段の出力点で飽和に達してしまいます。
その結果、20kHzのダイナミックレンジが狭い。
このため次善の策としてTR01、03をIDSSの大きいVランクにしたのですが、それでも1kHzより40〜50%低い。
ただ、実使用上ではこの周波数が基音ということはほとんどなく、高調波ということで振幅は小さく、問題はないようです。
入力換算ノイズレベルはAカーブフィルターを付けた状態で−119dBVです。
筆者が作った真空管式のMM−EQのノイズレベルより4〜5dB劣ります。
1kHzのダイナミックレンジは入力電圧で80mVです。電源電圧を上げれば100mVには出来ると思います。
☆.試聴結果
2021年1月、研究テーマ11&12の真空管OTLプリメインアンプと接続して江川工房のミニ試聴会で聴いて頂いた結果、非常に好音質との評価を頂きました。これは予想以上でした。
☆.最後に
今回作ったものはデータとしては完成度が高いとは言い難いものです。
ダイナミックレンジが狭く、ノイズが多いからで、歪率は問題ないと思っています。
この為、PDFファイルは作成しないことにしました。
また、MM−EQはMCダイレクトEQが出来てしまうと最終的には不必要かも知れません。
でも、MMファンのために改良して残すべきかも知れませんので、後日再検討するかも知れません。
以上
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