トランスやコイルを使わないで電圧を1/nに下げる回路があり、発明者の名を取ってショットニー回路と言います。
この回路については『間 幸久』氏によって雑誌トランジスタ技術1983年6月号に紹介されていて、当方も大いに参考にしました。
ショットニー回路の基本は整流後の平滑コンデンサを複数本(n本)直列接続して入力交流を例えば正の半サイクルの期間充電し、次の負の半サイクルの期間平滑コンデンサを並列接続にして放電します。
そしてこれを2組(上段と下段)用意し、半サイクルずつ交互に充電と放電を繰り返し、出力点のスイッチで2組の出力を切り替えて取り出します。
この原理を図にすると次のようになります。
この回路の出力電圧は元の整流平滑電圧の1/nになると考えられます。
例えば入力がAC100Vでn=3とした場合、AC100Vを整流平滑するとDC141Vになり、出力はその1/3のDC47V(ひく事のダイオード電圧)になると考えられます。
次に、この原理図を元に上図よりnをひとつ下げて、n=2として回路図にしてみます。
この図にはダイオードに黒点が付いているものと付いていないものがあります。
付いているものは正の半サイクルの時に導通するもの、付いていないものは負の半サイクルの時に導通するものです。
回路図右端の出力切替スイッチは正の半サイクルの時を示しています。
半サイクルずつ交互と言う事で、AC100Vを整流するブリッジ整流器のD1〜D4、通常4本1組の整流器は2本1組の計2組となりました。
D5〜D10は全て充電と放電で自動的に導通と遮断が切替わります。
出力の切替スイッチはAC100Vの正負によって自動的に切り替わるようにします。
次にMOSFET化に向けて素子の並べ替えをします。
さらにアースラインを設定し、太線にします。
次にダイオードや切替スイッチを全てMOSFETにします。
ダイオードとスイッチが18個のMOSFETになりましたが、Tr1からTr10までは記号の内部に書かれているボディーダイオードの向きで照合すればD1からD10までと素子の向きか変わっていない事が分かると思います。
また、右端の切替スイッチ(Tr11〜Tr18)は逆向きのMOSFETを直列にしています。
これはMOSFETはOFFになってもボディーダイオードが残る為の逆方向導通を阻止するためで、これでAC100Vが完全に分離されます
切替スイッチにも黒点をつけましたが、全て入力が正の半サイクルの時に導通となる素子を示しています。
☆.さて、この回路はコイルやトランスを使わないので、それによる効率の低下はないのですが、1次と2次が切り離されているのでエネルギ伝達で不利かも知れません。
そこで、最初の写真に示したような形で、実際にn=2の回路について試作しました。
さらに、平滑コンデンサを予定の4,700μF×2本並列だけでなく、1本増加して3本並列を臨時に測定してみました。
その結果を以下に示します。
☆.先ず効率としては、予定の4,700μF×2並列で最高効率96.8%/約370Wと言う効率が出ました。
この数値は研究テーマ・1のパルストランスを用いたADコンバータの効率と比べて最高効率ではほぼ同等、約800Wでは1%低い数字です。
また、4,700μFを臨時に3並列してみたところ、380Wでは研究テーマ・1をやや上回りましたが、800Wでは及びません。
☆.次に温度特性ですが、測ったのは最初に掲げた写真の一番左のアルミ板に取り付けられている整流用MOSFETのドレイン部分の温度です。
このMOSFETは上に示した回路図のD1〜D4に相当するTr1〜Tr4の内のTr4です。
このMOSFETは整流ダイオードの代わりであり、MOSFETを整流電流が流れている間だけONするようにゲートにパルスを与える事で同期整流化しています。
これは研究テーマ・1の同期整流と同じなので、詳細は研究テーマ・1あるいはトラ技をご覧になって頂きたいと思います。
また、ゲートにパルスを与えなければMOSFETは内部に共存するボディーダイオードによりダイオードとして整流動作(ボディーダイオード整流)をします。
温度特性はこの2つの状態を比較測定しました。
測定は出力570〜580Wの状態で測定しました。
次に測定結果のグラフを表示します。
600W近い出力を出しながら、しかも簡単なアルミ板の放熱器にほぼ隙間なくMOSFETを並べた状態、MOSFETとアルミ板の間は最近使われている伝熱ゴムシートです。
これで室温約25℃の状態で53℃程度にしか温度が上がりません。
☆.最後に基板の裏をご紹介します。
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