1.動機
スイッチング電源の分野では2次側方形波出力の同期整流が既に一般化していて、ダイオードの降下電圧による損失と温度上昇は改善しているようです。
ただ、ブリッジ整流ではない整流方式を採用している事が多いようです。
しかし、ブリッジ整流でない整流とブリッジ整流の効率を比較した場合、やはりブリッジ整流に勝るものはないのではないかと思います。
そこで最高の効率を達成したいと考え、スイッチング電源の2次側の方形波の整流をブリッジ整流のまま同期整流化し、さらには交流商用電源(1次側)AC100Vのブリッジ整流もブリッジ整流のまま同期整流化したいと考えました。
2.試作実験の方法
試作はAC100VからDC約60Vで1000Wを出力するAC−DCコンバータを通して行いました。
メイン基板には正弦波であるAC100Vを通常のブリッジ整流器を載せて整流平滑し、これをスイッチング回路で方形波化し、パルストランスで電圧を変え、再び整流平滑して直流を得るという方法で、2次側のブリッジ整流器にMOSFETを使用して同期整流化しました。
サブ基板にはMOSFETを使ったブリッジ整流器とこれを同期整流化する為の回路を載せ、通常のブリッジ整流器と差し替えられるようにしました。
トップの写真はサブ基板がメイン基板のブリッジ整流器のところにささっていて1次2次共にブリッジ整流型の同期整流をしている状態です。
3.結果
最初に整流方法の違いによる出力対効率の特性を掲載します。
次に1次側の整流において、通常のシリコンブリッジ整流器とAC同期整流の温度上昇を比較したグラフを掲載します。
次に2次側の方形波の整流において高速普通整流器の代わりとしてMOSFETのボディーダイオードを利用した整流とMOSFETにドライバー回路を付けた同期整流の温度上昇を比較したグラフを掲載します。
普通整流と同期整流の温度上昇が画期的に違う事が明らかです。
アルミ板にMOSFETをほぼ隙間なく並べた程度の放熱器で室温20℃程度の状態で50℃にもならない温度です。
4.同期整流概論
さて、ACDCコンバータの設計においては回路各部分の最適化をするのは勿論の事ですが、さらなる高効率化の手法は前記したように1次側AC100V正弦波の整流、2次側方形波の整流の両方にブリッジ整流の同期整流を導入した事です。
同期整流と言うのは、交流を整流するダイオードをMOSFETに置き替えてゲートパルスによりONタイミングを制御し、導通時の電位降下を極少化する方法です。
ダイオードを用いて整流すると電位降下が1素子ごとに0.6Vまたはそれ以上発生します。
さらに大電流整流では電位降下が1.2V〜1.4V以上にもなり、電位降下×電流=損失が大きく発生します。
またそれにより温度が上昇し、その結果効率が低下します。
そこで整流器をMOSFETに置き換え、適切なゲートパルスで電位降下を極少化する、つまり同期整流化する事で損失を極少化し、温度が低下し、結果として上記のような高い効率が達成されました。
特に1次側AC100Vの整流を同期整流化した事は新規開発であると考えています。
正弦波同期整流の回路方式はFF型とFB型の2種類を考案しました。
FF型とFB型の内容については詳論で述べます。
上の写真の茶色の基板の方がFF型、ガラス基板の方がFB型です。
ただし、両者に特に性能の違いはありません。
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