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研究テーマ・9(MM/MC切替型イコライザ)

研究名 MM/MC切替型イコライザ
研究終了 2018年5月

内容説明

トップの写真は完成した1種類目の回路の改訂版(回路11A)に改良した電源を加えた試聴用セットの内部です。

 

次にこれの前面側の写真を掲載します。

 

左は電源スイッチとインジケータ、右はMM(下)とMC(上)の切替です。

 

次にこれの背面側の写真を掲載します。

 

中段の左から入力RL、出力RL、そして電源のインレットです。

 

入出力端子を金メッキ品にし、左下にGND端子を付け、ゴム足を付けました。

 

☆.さて、全てがデジタル化したと思われる現代でもオーディオの世界ではアナログレコードは健在であり、おそらく発売は30年も前と思われるDENON(筆者はデンオンと読む)のDL−103というMCカートリッジが今でも3万円前後で売られているようです。

 

下はDENONのDL−103のページです。

https://www.denon.com/en-us/product/・・・

 

下は販売先の一例のアマゾンのページです。

http://www.amazon.co.jp/・・・

 

楕円針のDL−301Uもあります。

https://www.denon.jp/ja-jp・・・

 

☆.そこでアマチュア諸氏なら秋葉原などで容易に部品を集めて、比較的容易に作ることが出来るアナログレコード用MM/MC切替型イコライザを開発することにしました。

 

☆.このイコライザはMM用イコライザの前にMC用ヘッドアンプを追加する方法ではありません。

 

利得切替式のイコライザ です。

 

この方法であればPHONOというポジションのないアンプにも容易に追加できます。

 

MMイコライザは入力2.5mVで出力150mV、利得は35.5dBです。

MCイコライザは入力0.15mVで出力150mV、利得は60dBです。

 

☆.箱は摂津金属工業(株)CB−65(180×65×120)で、入手先はサトー電気です。

 

 

 

☆.回路形式と名称

 

回路形式は主2形式と副2形式を考えました。

 

☆.最初の主回路形式は超低雑音、超高利得、低歪率のオペアンプで、初段がトランジスタで出力部分にバッファを内蔵しているアナログデバイス社のAD797を増幅回路に使用したもので、回路10番台と称します。

 

☆.もう一つの主回路形式は超低雑音を目指すために2SK170GRという超低雑音のFETを使用した差動アンプを初段とし、後続に好音質と言われているオペアンプを使用したもので、回路20番台と称します。

 

☆.また、バイアス安定化のために副形式としてDCサーボをかけたものを回路○1、電解コンデンサでDCカットをしてDC全帰還としたものを回路○2としました。

 

☆.さらに、当初は小型1/4W型の抵抗を使って回路11、回路21、回路22の3種類を作ったのですが、抵抗以外の部品は小型品ではないので、抵抗も小型品でないオーディオ用1/4W型を使ったDCサーボ型を作り、回路○1Aとしました。

 

 

 

☆.回路基板

 

イコライザ回路は前記した当初3種類と追加2種類を作りました。

 

その写真を次に掲載します。

 

左から順に小型抵抗を使った当初の分である回路11、回路21、回路22です。

 

次は1/4W音響用抵抗を使った追加の分である回路11A、回路21Aです。

 

と、最初はいろいろと考え、作っては測定し、聞き、耳の良い方々にも聞いて頂き、改良を重ねた結果、回路11Aだけが好ましい音として残りました。

 

また、PHILIPS製の小型ポリプロピレンコンデンサ1μFが容易に手に入る事が分かったため、これを多用することにし、回路11Bとしました。

 

ということで、以下については回路11Aと回路11Bについて記する事に致します。

 

 

 

☆.回路11A

 

回路11Aは増幅回路にAD797を使い、DCサーボには高音質オペアンプで出力部にバッファを内蔵しているNE5532を使ったものです。

 

☆.先ず回路11Aの基板の写真をご覧ください。

 

☆.次に、回路11Aの回路図を掲載します。

PDFファイルをご覧になりたい方は をクリックして下さい。

 

回路図中に (ポリプロ) と記載されているコンデンサは『ポリプロピレン・フィルム・コンデンサ』です。

 

C01,02の実物はスチロールコンデンサを使っていますが、音質および特性的にはどちらでも構いません。

 

なお、このサーボ回路は1CHあたりオペアンプ1回路で出来るタイプですが筆者の発明ではありません。

 

☆.次に、広帯域の理論利得周波数特性を掲載します。

 

図中に示した『○○−C前』は出力カップリングコンデンサC15〜16の前を意味し、『○○−出力』は出力端子の特性です。

 

☆.次に、実測利得周波数特性を掲載します。

 

☆.次に、実測特性のRIAA偏差特性を掲載します。

 

なお、RIAA標準値はラジオ技術誌2014年4月号137頁第1表としました。

 

最初はMCです。

 

次はMMです。

 

MCとMMでは仕上り利得が24.5dBも違うので特に超高域の特性は同じにはなりません。

 

差支えのない特性になれば良いと考えています。

 

MCのノイズ出力は前記の試聴用セットに実装した状態で68μV/(Aカーブ)です。

 

 

☆.次に部品表を掲載します。

 

部品などの価格は店頭購入の税込価格ですが、必ずしも正確ではありません。参考としてください。

 

部品を回路と電源やその他で両用しているものについては電源やその他の方に記載しています。

 

☆.ここに使用しているアナログデバイス社の超低雑音、超高利得オペアンプ、AD797は樫木総業(株)やRSオンラインで入手可能です。

 

樫木総業(株): http://www.kashinoki.co.jp/・・・

 

RSオンライン: http://jp.rs-online.com/web/

 

 

 

☆.回路11B

 

先ず、ポリプロピレンコンデンサを多用した為にオレンジがいっぱいになった回路11Bの基板の写真をご覧ください。

 

DCサーボ部分のポリプロピレンコンデンサ1μF63Vは漏洩磁束を拾いやすいために磁気シールドをする必要があるかも知れません。

 

その場合は次の写真のように珪素鋼板を載せれば良いと思います。

 

次に、回路11Bの回路図を掲載します。

PDFファイルをご覧になりたい方は をクリックして下さい。

 

☆.次に、実測利得周波数特性を掲載します。

 

☆.次に、実測特性のRIAA偏差特性を掲載します。

 

最初はMCです。

 

次はMMです。

 

☆.次に部品表を掲載します。

 

1μFのポリプロピレンコンデンサを多用した為にだいぶ材料費が上がってしまいました。

 

 

☆.電源部

 

☆.電源部分の回路図を掲載します。

PDFファイルをご覧になりたい方は をクリックして下さい。

 

☆.次に基板内の部品表を掲載します。

 

☆.次に基板外の部品表を掲載します。

 

 

1次側200V、2次側全電圧50V0.2Aのトランスを用い、これを半電圧で使うことにより、漏洩磁束の影響を約30%(3dB)軽減しています。

 

トランスは 豊澄電源機器(株)2H−5002で、入手先は (有)福永電業です。

 

そして、トランスの配置をトップの写真のようにすることにより、実用上差支えのない程度までハムを低減しました。

 

整流器の品種については前記の型番のものにこだわることなく、リバースリカバリータイムが概ね100nS以下のものであれば問題はないと思います。 

 

 

 

☆.音質のポイント

 

主たるポイントは以下の通りです。

 

1.増幅回路には入力部初段がトランジスタであるAD797を使いました。

 

2.200Hz前後のRIAA偏差がマイナスにならないように定数調整をしました。

 

200Hz前後がわずか−0.2dBでも痩せた音になるRIAA偏差データを掲載します。

 

3.可聴帯域より高い周波数部分について、出力部分にRとCのLPFを構成しました。

 

これはNFBでRIAAカーブを構成すると超高域においては標準値からプラス方向にずれるので補正するべきであるという意見に沿うものです。

 

耳に聞こえない部分ではあるが、音質には影響があるとのことです。

 

MMにおいては切り替えを付ければMCと同等に出来ますが、今回は行っておりません。

 

 

4.マイラー・コンデンサをポリプロピレン・コンデンサに変更しました。

 

これはマイラーでは音の生々しさが出ない、マイラーでは音が晴れない、ポリプロピレンにすべきであるという意見に沿うものです。

 

F特を慎重に同等に仕上げたところ、例えば The Oscar Peterson Trio のWe Get Riquests、B面1曲目のYou Look Good To Meで Ray Brown が弓で弾くBaseの音が、弦がこすられながら出る音である事が分かるようになったと思います。

 

次の写真は前記の曲が入ったCD(左)とLPレコード(右)です。

 

クラシックで気が付いたものとしては、ブルーノ・ワルターが指揮するベートーベンの交響曲第5番『運命』の第3楽章でチェロとコントラバスが力強く主旋律を弾くところで、弦がこすられて震えている感じが生々しく出てきました。

 

また、全ての曲の全ての音が伸びやかで明るく、このような素晴らしい音が30年以上も前に刻まれていたのかと感慨深いものがありました。

 

次にポリプロピレンコンデンサの部分を拡大した写真を掲載します。

 

赤オレンジのコンデンサがニッセイ製のAPSというポリプロピレンコンデンサで、秋葉原界隈などで入手可能です。

 

値段的にはマイラーコンデンサと大差なく、是非とも採用すべきものと考えます。

 

1μFという比較的大容量のポリプロピレンコンデンサはPHILIPS製で、秋葉原の若松通商で入手しました。

 

 

5.前の写真の中の緑チューブの電解コンがニチコン製のMUSEと言うオーディオ用の両極性型(bp)の電解コンデンサです。

 

6.DCサーボ初期の頃、DCサーボは音が悪いと言われた経緯がありました。

 

しかし、それはサーボ回路に用いるオペアンプICやコンデンサに音質的に不十分なものを使った事が原因であったと思います。

 

この回路では好音質オペアンプNE5532とオーディオ用電解コンあるいはポリプロピレンコンデンサを用いています。

 

 

7.安定化電源には78○○、79○○と言う3端子レギュレーターを使うべきでないと思います。

 

下のページに適切でない旨の記載があります。

FIDELIX技術情報です。

 

しかし、ここで紹介している集合回路は非常に高価なので、ツェナークランプのリップルフィルタと出力並列電解コン2,200μFにしました。

 

電源出力のリップルについてはアンプ出力としては問題ありませんでした。

 

音質的にも他の電源と較べて遜色ないものになったと思います。

 

 

 

☆.最後に

 

当初は簡易構成とそれなりの材料費、容易な部品調達でそれなりの音質を目標としましたが、結果的には簡易構成ながらも高度な音質が達成出来たと思います。

 

多くの方々から助言と情報を頂き、良いイコライザが完成出来たと思います。

深く感謝申し上げる次第です。

 

 

☆.ご注意  当回路には電源スイッチON、OFF時、およびMMとMCの切り替え時のポップノイズ除去回路はついておりません。

 

スピーカーを壊すことのないよう、ご注意ください。

 

 

                             以上

 

 

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