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研究テーマ・2(ショットニー回路の同期整流高効率化・詳論)

研究名 ショットニー回路の同期整流高効率化
研究終了 2012年1月

内容説明

☆.このページは詳論です。

 

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縮尺されたブロック図や回路図はダウンロードすると全て見る事が出来ます。

 

☆.ブロック図

 

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概論ではダイオード役のMOSFETとスイッチ役のMOSFETだけを書きましたが、ここには3種類の検出回路が書かれています。

 

1.極性検出回路

ここではACの正の半サイクルと負の半サイクルを検出して、回路の一番最後でACの極性によって上段と下段のどちらかを出力する為の切替信号を作ります。

 

2.整流電流検出回路

ここでは整流回路を同期整流する為に整流電流を検出して整流用のMOSFETをONする信号を作ります。

また、出来た信号は充放電切替回路で充電時に導通するMOSFETをONする信号にもなります。

 

3.放電電流検出回路

ここでは充放電切替回路で放電時に導通するMOSFETをONする信号を作ります。

また、出来た信号は出力切替回路中の逆流防止ダイオードの役目をするMOSFETをONする信号にもなります。

 

☆.回路図

 

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では、部分回路を順に説明する部分説明図に入ろうと思います。

上の全体回路図から一部を抜き取っていますので、よろしく対照して下さい。

但し、基幹回路だけにしようと思います。

 

1.正弦波同期整流の整流電流検出アンプと入力AC100Vの正の半サイクルと負の半サイクルを検出する極性検出回路。

 

 

回路図中にある少し大きめの黒点は概論の原理図と同じ意味です。

入力のAC100Vが正の半サイクルの時に導通したり、正の半サイクルの時に出力をしたりしている事を示しています。

 

IC913オペアンプの1〜3番端子側は次の部分回路図で出て来る同期整流の検出電流のアンプです。

同期整流の動作については次で説明します。

 

オペアンプの5〜7番端子側がAC100Vの極性検出用です。

IC913は正の半サイクル検出アンプ、IC914は負の半サイクル検出アンプです。

 

☆.ショットニー回路ではトランスを用いない方法でAC電源の極性を判別しなければなりません。

いや、アースフロートの独立電源を作る為に普通のトランスを用いる方法もあるので、そこから取る方法もあると思われ勝ちですが、実はトランスは直流を伝達しないので、例えばプラスとマイナスの波形が非対称だとゼロクロスが一致しないのです。

 

ただ、電源とはアースを分離しなければならないので、フォトカプラによる方法を採用しました。

 

さて、AC100Vが仮に5Vの時にLEDが点灯し始めるようにしようとして、その電流を1.5mAとすればLEDへの直列抵抗は約3.3kΩとなります。

 

しかし、この抵抗の消費電力はAC100Vが印加されるのとほぼ同じですから、約3Wとなります。

また、LEDへの電流は実効値としては約30mAとなり、最大定格50mAの1/2を越える大きな電流です。

 

☆.定電流ダイオード

 

そこで定電流ダイオードを採用する事にしました。

D911〜D914です。

使用したのは電流値が4.5mAのもの(E452)です。これなら消費電力は0.45W程度です。

実際の電流値は100V時には3mA程度のようですが、正負いずれかの半サイクルの時に電力を大きく消費するので、許容損失300mWには余裕を持って入っています。

 

なお、耐圧は100Vなので、片方向2直列になります。

本来は分流抵抗を入れて最大印加電圧を均等にして限界耐圧を避けるべきなのですが、精度を必要としないので省略しました。

 

さて、定電流ダイオードとはセミテック(株)、旧石塚電子(株)の製品でツェナーダイオードに不純物制御をしてわざと漏洩電流を増大化させたものです。

定電流ダイオードについては下を参照してください。

  http://www.semitec.co.jp/products/led_device/index.html#crd

回路図記号はこの会社が決めたものです。

ただ、逆向きは普通のシリコンダイオードなので回路図の見方と実動作に注意が必要です。

 

☆.定電流ダイオードとフォトカプラを組み合わせ、さらに接続されたオペアンプによりAC100Vのゼロクロスを検出し、出力切替用の信号を得ています。

 

ではここでACの極性検出出力のオシロ波形を掲載します。

黄色はフォトカプラ端子間電圧波形、青色は極性検出出力を示します。

 

先ず、正の半サイクル検出出力の立ち上がりと立ち下がりです。

 

 

青色がゼロクロスより30μS早く上がり、80μS遅く下がっています。

 

次は負の半サイクル検出出力の立ち下がりと立ち上がりです。

 

 

青色がゼロクロスより80μS遅く下がって、40μS早く上がっています。

 

2つの波形からオーバーラップタイムは110〜120μSで、単純構成で安価なフォトカプラのターンOFF遅延の影響が出て、ONとOFFが非対称でしかも立ち上がりにバラツキが出ている事が分かります。

しかし、これで差し支えはないものと思います。

 

2.次は正弦波同期整流回路の一部分です。

 

この部分は研究テーマ・1およびトランジスタ技術2011年8月号に掲載したものに良く似た正弦波同期整流回路です。

 

正弦波同期整流は整流電流が流れている時だけMOSFETをONします。

この為、整流電流をR932の10mΩと言う微少抵抗で検出し、前の図のIC913で40dB増幅してMOSFETドライバを経由してMOSFETのゲートをドライブします。

増幅は反転増幅です。

微少抵抗に流れる電流の向きからプラス出力を得るためです。

 

この方法で出力が100〜150Wあたりから同期整流となります。

それ以下の出力では同期整流にならず、普通のダイオード整流と同じです。

効率を上げる、整流器の温度を下げると言う目的からすれば、小出力では同期整流になる必要はないと思います。

 

研究テーマ・1およびトラ技では、正弦波同期整流は電流検出を整流器の入力側でするのをFF型、電流検出を整流器の出力側でするのをFB型と称しました。

この回路ではFB型を採用しました。

 

FB型ですが、MOSFETドライバはD級アンプ用のドライバではなく、MOSFETをドライブできるフォトカプラです。

 

その理由ですが、この回路はアースが2本であり、アースラインの異なる信号でMOSFETをドライブする箇所があるからです。

 

☆.ブートストラップ

 

この説明には次の図を使います。

分かりやすくする為にTr922をスイッチにしました。

 

 

さて、MOSFETドライバIC921の電源電圧12VはD921を通して供給されます。

IC922はごく普通にR922を通して12Vが供給されます。

D921のアノードはR922の左端とつながっており、ここに電源から12Vが供給されています。

 

このような電源供給のやり方をブートストラップと言い、IC921の電源電圧はこのICの5番端子の電圧がゼロVと約140Vの間を往復するにもかかわらず、8番端子と5番端子の間は常に約12Vです。

 

別の言い方をすれば8番端子はアースラインに対し12Vと140V+12V=152Vの間を往復しています。

 

これはスイッチに書き替えたTr922がONした時にD921とTr922を通してC921が充電され、その後Tr922がOFFしてもC921のチャージがある間はD921が逆方向なのでチャージが逃げず、8番端子と5番端子の間の電圧が維持されるのです。

このため、見方によっては140V+12V=152Vに見えたりするのです。

 

同様の方法は他の部分でも採用しています

この方法を多用する事で、アースフロートのドライブ電源の数を少なくしています。

 

3.次は充放電切替回路です。

 

 

ここは中段のTr942は充電時にON、上段下段のTr941とTr943は放電時にONすると言う事で、直列充電 並列放電を実行するところです。

 

充電時にTr942をONするタイミングは同期整流のTr922、Tr923と同じタイミングです。

 

放電時にONさせるTr941とTr943は、Tr943に電流が流れた時だけONすると言う事でFB型正弦波同期整流と同じ方法です。

 

ただし、いずれも出力が150W程度から下では検出出力が小さいため、MOSFETをONするには至らず、ボディダイオードとして動作します。

 

☆.ここで充放電切替回路で放電時に導通になるMOSFET、Tr941とTr943をONさせる信号の内の上段の分を掲載します。

 

掲載する波形は合成で、黄色がACゼロクロスで青色が上段回路の放電電流検出出力です。

放電電流検出出力は約400W出力時のものです。

 

 

 

放電電流検出出力の立ち上がりは黄色のACのゼロクロスより30μS早く、立ち下がりもゼロクロスより30μS早いです。

立ち上がりは極性検出出力とほゞ同じタイミング、立ち下がりは下段の立ち上がりとほゞ同じタイミングです。

極性検出出力とは異なるタイミングである事が分かります。

 

4.次は出力切替回路です。

 

 

この図のTr961、Tr963、Tr964及びTr965が正の半サイクルで同時にONします。

 

ただし、Tr964だけは充放電切替回路のTr943に放電電流が流れている時にONします。

これはTr964が逆流防止と感電防止のダイオードをMOSFET化したものであるためです。

 

上段と中段のTr963とTr964はプラスラインのスイッチで、下段のTr961とTr965がアースラインのスイッチです。

Tr961も逆流防止と感電防止用ですが、逆流防止はTr964でまかなっているので、ドライバを独立させませんでした。

 

そして、正の半サイクル時の出力がOUT65VとEと書いてある出力端子の間に出て来ます。

 

☆.出力は上に図示した正の半サイクルの出力と図示しない負の半サイクルの出力が交互に出力します。

次にこの出力のDC波形とリップル波形を図示します。

 

 

この図は約30Wを出力している時の波形で、黄色がDC出力、青色が拡大したリップル波形です。

 

                                 以上

 

 

 

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